構成設計による隠蔽性改善事例

 当社は、受託加工サービスにとどまらず、材料選定や設計を手がける「受託開発サービス」を展開しています。「材料の探索活動において、要件に適合する材料が汎用品ではなかなか見当たらない」などのお悩みをもつお客様から「製品開発・製造委託」について当社へご相談いただいくことがあります。当社は、お客様と伴走しながら課題解決を目指す「開発型ものづくり企業」として、これまで多くのフィルム材料の開発に取り組んできました。今回は、既存の技術を掛け合わせたプロセス最適化をご提案し、お客様の課題解決に至った事例をご紹介します。

低コストで高い隠蔽性を

 ご依頼内容は「汎用品として調達可能な白PETフィルムよりも高い隠蔽性を有するフィルムは作れないか?」というものでした。お客様との打ち合わせにて、秘匿部分が透けてはならない用途であり、最終製品のイメージとしては、数百μmの厚みをもつ、白色のPETフィルムがほしいとのことでした。本来、白PETフィルムは素材そのものに隠蔽性がありますが、近距離で強い照明を当てた場合、完全に照明の光を遮蔽することはできません。
 そこで当社は、秘匿部分をコインで削るスクラッチカードの隠蔽技術が本テーマに応用展開できると考え、まずは透明なPETフィルムに高い隠蔽性を有する白い機能膜を形成(コーティング)する方法で検討を開始することになりました。いくつかの設計案をご提案し、お客様にてサンプル評価を行っていただいたところ、期待する隠蔽性の基準はクリアできたのですが、「ターゲットコストにあわない」というご意見をいただきました。

白を塗らずに黒を塗る、工程数削減の設計提案

 まずは、コストの構成要素を分解し、ターゲットコストを達成するための改良の方向性を検討しました。前回の水準サンプルは、高隠蔽性の達成のため機能層を両面に全面コーティングしなければならず、それだけで2工数になります。また、さらに隠蔽性を高めるため、機能層を厚くコーティングする必要があり、機能層に使用している原料の使用量が増えます。原料も白色顔料を高濃度に配合したタイプで安価な原料ではありませんでした。
 改良のポイントは、工数と材料コストの削減です。一度、白色よりも高い隠蔽性を有する黒色の機能層にも目を向けてみました。同じ厚みであれば、白色よりも黒色の方が隠蔽性に優れるため、原料の使用量は抑えることができます。ただ、この黒色の隠蔽層を表面にコーティングしては、見た目が黒いフィルムになってしまうので、お客様の求める「隠蔽性が高く、白いPETフィルム」ではなくなってしまいます。ただ、この黒色の隠蔽層に目を向けたことで「当社のコア技術であるラミネート技術を使って、黒色の隠蔽性をフィルムの構造内に隠してしまうのはどうか?」という発想がうまれました。黒色の隠蔽層を透明PETフィルムの表面にコーティングするのではなく、白PET同士を黒色の接着剤でラミネートすることで、高い隠蔽性を保ちつつ、工数削減と原料の使用量を抑えられると考え、この設計案で再評価に臨みました。

 ラミネートする接着用塗剤に黒色顔料を処方配合することは思ったよりも単純ではなく、相溶性や分散性など、塗剤としての安定性を一つ一つチェックしていきました。また、高い隠蔽性を実現するため、顔料の濃度、膜厚、接着力、塗工適正などのバランス調整には何度もトライ&エラーを繰り返しました。正直、苦難の連続でしたが、何とかお客様の求められる設計ができ、無事に合格評価を得ることができました。

既存技術の掛け合わせで課題を解決

 豊富な知見と独自の発想力をベースに既存技術を掛け合わせることで、一見困難に思える課題に対しても最適なフィルム構成を見出し、お客様の理想を形にしてまいりました。
 当社では、単なる要求仕様のクリアにとどまらず、お客様の潜在的なニーズや用途の先にある価値まで見据えた「設計コンサルティング」を強みとしております。フィルムの材料選定やプロセス設計におけるお悩み、新たな物性実現へのチャレンジがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。確かな技術力と柔軟なインスピレーションで、貴社の課題解決を強力にサポートいたします。