結露という難敵を突破せよ ~品質向上の舞台裏~

 
 機能性フィルムの開発・製造において、切っても切り離せないのが「塗工不具合」との戦いです。今回は、過去のトラブルから得た知見を活かし、新コーター(C3号機)導入時に「結露」という難敵を設備面からのアプローチで解決に導いた実例をご紹介します。

乾燥炉の直前で起きた「不可解なムラ」 

 フィルムへの塗工は、大きく分けて「塗工」「乾燥」「ラミネート」「巻取」の4工程で構成されます。 過去、あるコーティング剤の塗工を行っていた際、乾燥炉から出てきたフィルムに原因不明の「ムラ」が発生しました。調査の結果、塗工条件や乾燥条件に懸念される点はなく、塗工直後の外観も正常でした。しかし、乾燥炉に進入する直前の搬送ロール(ガイドロール)とフィルムが、結露によって激しく濡れていることが判明したのです。

 キンキンに冷え切ったガイドロールと、そこに付着した水分。これが塗面側に悪影響を及ぼし、品質を損なう原因ではないかと疑いました。これが、私たちと「結露」との戦いの始まりでした。

結露を招く「気化熱」と「表面積」の相関

 なぜ、この乾燥炉の直前で結露が発生したのか。その要因は「湿度」と「気化熱」の相互作用にありました。天候という不可抗力と、製品特性上必要なフィラー。この二つの条件が重なったことで、ロールが露点温度を下回り、結露を招いていました。

【湿度の影響】
 乾燥炉に供給されるクリーンエアは、外気からHEPAフィルターでろ過した空気を取り込んでいるため、季節や天候によって変化する湿度の影響を大きく受けます。外気が高湿度になると、乾燥炉内の相対湿度および露点温度が上昇することで、結露しやすい状況になります。

【気化熱による冷却】
 塗工直後から乾燥炉に入るまでの室温下で、溶剤が揮発する際に「気化熱」を奪い、搬送中のガイドロールと、そこに接しているフィルムが冷やされ、露点温度を下回ってしまいます。

【フィラーの影響】
 「フィラー」が含有されている塗剤の場合、塗面の微細な凹凸によって表面積が増大し、溶媒が単位時間あたりに揮発する量が増え、冷却効果がさらに強まってしまいます。

 このような現象の相乗効果により、大きな外観不良を招いたことが分かりました。

「温める」という逆転の発想:設備面からのアプローチ

 C3号機(リップコーター)の導入時、この結露問題を解決するアプローチとして乾燥炉侵入前に「ガイドロールへの温水通水システム」の付帯を検討しました。これは、「ロールが冷却されて結露するならば、常に加温し続ければよい」という発想に基づくものです。具体的には、ガイドロールの内部に温水を循環させる機構を付帯しました。

 これにより、ロールに一定の熱を与えることが可能になり、気化熱による冷却が起こった場合でもフィルムにも伝導し、フィルム表面の温度が露点温度を下回ることを防ぐことが可能となりました。本システムは様々な製品での効果が実証され、現在ではC2号機(マイクロバーコーター)にも付帯されています。

「加工条件」×「設備」で早期の製品化をサポート

 当社は、単なる機能性フィルム加工に留まらず、今回のような設備面からのカスタマイズを含めたトータルな課題解決を得意としています。現場で培った技術的知見を活かし、お客様の製品開発を強力にバックアップします。

 過去のトラブルを貴重なデータとして蓄積し、新設備の設計や既存マシンのアップグレードへタイムリーに反映できる組織力こそが当社の強みです。昨今の市場の高度な要求に対し、最適な製品開発と確かなモノづくりを提供し続けてまいります。